PRIMUS(プリムス)
P-153 ウルトラバーナー
登山で私が主に使っているのは、プリムスのP153ウルトラバーナー。
なのでこういった登山用携帯式こんろのことを私自身はバーナーと呼ぶことが多いです。
ただ、伝統の登山誌「山と渓谷」を発行している山と渓谷社が運営するヤマケイオンラインではこのように表記されていました。
登山道具の買い方・選び方、ショップのスタッフに聞きました!
山でお湯を沸かしたり料理をしたりする際には、登山用のストーブ・バーナー(以下 ストーブ)は欠かせないアイテムだ。
P-153ウルトラバーナーの販売元であるプリムスのサイトを見てみると、商品カテゴリーが「ストーブ/コンロ」になっていました。バーナー表記はありません。
なお、コールマン・ユニフレーム・キャプテンスタッグの3社は商品カテゴリーが「バーナー」。
キャンプ系はバーナー優先のようですが、登山業界では「ストーブ」という呼び方をするのが一般的のようです。
ただ、バーナーとストーブで言葉の意味はどう違ってくるんでしょうか。
辞書にどう書かれているのかが気になったので、ちょっと調べてみました。
辞書で調べた、バーナーとストーブの言葉の意味
バーナーといえば、山をやらない一般の人が思いつくのはトーチ式のバーナーではないでしょうか。溶接や、キャンプでは炭に火をつけるときに使います。
もうひとつのストーブについても、一般的なのは暖房器具の電気ストーブなどです。
辞書で言葉の意味を調べてみると、このように書かれていました。まずは英和辞典から。
burner
①焼く人 ②(ランプ・ストーブなどの)火口,燃焼部,バーナー;[俗用的に]燃焼器
引用:ジーニアス英和辞典/大修館書店
stove
【原義:蒸しぶろ→暖房された部屋→ストーブ】①(料理)レンジ,こんろ(cooker) ②[通例複合語で]ストーブ,暖炉《◆電気・ガスではheaterを用いるのがふつう》
引用:ジーニアス英和辞典/大修館書店
日本語の広辞苑はどうでしょうか。
バーナー
気体燃料・霧状液体燃料または微粉炭の燃焼装置。また、その火口。空気を適量混合して点火。
引用:広辞苑/岩波書店
ストーブ
石炭・石油・ガス・電熱などを用いる暖房装置。
引用:広辞苑/岩波書店
アメリカ最大のアウトドア用品販売店・REIの商品カテゴリー名も「stove」だったので海外では登山用こんろは「ストーブ」が優位のようですが、日本では家庭用ストーブが普及している影響で「バーナー」呼びが増えてきているように思います。
エバニュー(EVERNEW)
チタンアルコールストーブ EBY254
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ちなみに、こちらは軽量・コンパクトさが人気のアルコールストーブ。エバニューは単品では「ストーブ」呼びですが、
エバニュー(EVERNEW)
アルコールバーナーセット EBY249
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セットになると「バーナー」呼びになっていました。
バーナーとストーブはどちらが主流なのか商品名の数を数えてみた
最近発売され話題となったMSR(エムエスアール)の「ウインドバーナー」。個人的な印象として、最近は「バーナー」表記の商品が増えてきているような印象があります。
アウトドアメーカー各社は自社の火器・こんろの商品名にどちらの単語を付けているのでしょうか。
現在ホームページに載っている登山用こんろの名前を調べて数をカウントしてみました。
※登山用のみ、ツーバーナーを除く。商品名にどちらの言葉も入っていない場合は「その他」。
ブランド | バーナー | ストーブ | その他 |
Prims(プリムス) |
2 | 4 | 0 |
EPI(イーピーアイ) | 0 | 5 | 0 |
SOTO(ソト) | 1 | 7 | 2 |
MSR(エムエスアール) | 1 | 0 | 5 |
snowpeak(スノーピーク) | 0 | 4 | 1 |
Coleman(コールマン) | 0 | 2 | 2 |
ユニフレーム | 3 | 0 | 0 |
キャプテンスタッグ | 4 | 0 | 0 |
合計 | 11 | 22 | 10 |
バーナー11、ストーブ22、その他10という結果になりました。
世界で一番最初に登場した加圧式携帯こんろの名称は?
ふと思ったのですが、世界で最初に発明された加圧式携帯こんろは何と呼ばれていたのでしょうか。
wikipediaの「ポータブルストーブ」の項目に興味深い情報がありました。
最初の加圧式ポータブルストーブはブロートーチをベースにしたケロシン(灯油)を燃料とするもので、1892年にスウェーデンのフラン・リンドクヴィストによって発明された。このストーブはプリムス・ストーブと名付けられ、極地探検や高山への登山にも耐えうる高い信頼性と強力な熱量を発揮する性能を持っていた。
言葉の響きで考える今後の展開
今後、「ストーブ」と「バーナー」はどのようにシェアが変化していくのでしょうか。
私が思うに、五十音の音色から受ける印象がシェアの増減に影響する可能性はあると思います。
商品名のネーミングについて、製造業のマーケティングコンサルタント・弓削徹氏はブログでこのように述べています。
米国では「phonetic symbolism」(音声象徴)と呼び、音のイメージがネーミングやブランドに与える影響について研究が進んでいます。
こうした研究報告を下敷きにしますと、男性や男の子向けの商品では有声破裂音である「B、D、G」の入った(とくに語頭)ネーミングがよいと考えられます。
これ例外にも、最後の母音がアで終わる単語は「明るい、強い、元気、発展的、広がりを感じる」という効果があるとのこと。
「ストーブ」は、語頭が無声音でインパクトが弱く、母音がウで終わるため「かわいい、デリケートな、なめらか、唸るような力強さ」という印象に。
音声象徴の観点では「バーナー」が有利。誌面やSNSでも「バーナー」の文字が増えてきているように思うので、アウトドアブランド各社も商品ネーミングに採用してシェアが高まる可能性があると思います。
結論:登山用途なら「ストーブ」が安定的かつ伝統的
バーナーなのかストーブなのかどっちやねんと思って色々調べてみた結果、登山業界ではストーブと呼んだ方が「山の人」「冒険家」っぽくなることがわかりました。
ただ、気になるのが一般の人に対しての説明のとき。「バーナー」も「ストーブ」も別商品の認知度が高いので、「登山用の携帯ガスこんろ」などと言い直さないと伝わりにくいです。
いっそのこと「ストーブ」でも「バーナー」でもない、新しい言葉が生まれて統一されてもいいのではと思うのですが。
【amazon】JETBOIL(ジェットボイル) アウトドアバーナー スタッシュ
ちなみに低燃費クッキングシステムのジェットボイルは、アメリカ本国のサイトでは「ストーブ」、日本のサイトでは「バーナー」でした。どっちにするか悩んだんだろうなあという苦労が感じられます。
追記:登山用品店の商品カテゴリーについて
登山用品店では登山用携帯コンロはどんなカテゴリーに分けられているのかを調べてみたところ、好日山荘さんのwebストアでは「バーナー」、石井スポーツさん(ヨドバシ.com)は「シングルバーナー」、さかいやスポーツさんは「ストーブ」でした。