ドローン撮影による空撮プロモーションビデオが増えています。昔ネットで話題になっていたOKGOのビデオクリップなどはまさにドローン無しでは撮影できない、新しい時代を感じる映像でした。
OK Go - I Won't Let You Down - Official Video
https://youtu.be/u1ZB_rGFyeU
ドローンを使えば「すごい動画」「かっこいいムービー」が低予算で作れます。TVCMやスポーツの記録撮影・企業ビデオなどでも使用され、最近は観光地のプロモーションビデオでもドローン空撮が使われるようになってきました。
ただ、個人的には観光PR映像にドローンを使うのは結果的にイメージダウンになる恐れがあるかもしれないと感じています。
その理由は、「人間はドローンから見た景色を見れないから」です。観光客が現地に行って、地上での人間目線の風景に満足できなければかなりがっかりすると思います。リピーターにならないのはもちろん、ツイッターなどのSNSで酷評されてしまうかもしれません。
【消費者サイドの期待を裏切る可能性があるかもしれません】
某ハンバーガーチェーン店の広告は、広告写真の商品と実際に提供される商品との差が大きいとしてネットで話題になりました。企業側は、照明技術を駆使したりドライアイスで湯気を作ったり薬品で形を整えたりCGでレタッチ(修正)してごまかしたりなど、商品を出来る限り魅力的にするために様々なテクニック・画像修正を使って「イメージ写真」を作っています。企業にとっては当たり前ですが、消費者にとっては不利益です。
お見合い写真でも「自分を盛る」行為は行われています。照明をしっかり当てて写真を撮り、撮影データにレタッチ(CG修正)を施すなどはもう当たり前の事となっています。実際に会った時の差が大きいと印象は悪くなるように思いますが、まずは相手に選んでもらって会わない事には話にならないという事情があります。
観光地についてもそういった「来てもらわないと話にならない」という事情はあるかもしれませんが、盛りすぎると消費者サイドの期待を裏切る可能性もあることを考慮した方がいいのではと思います。ドローンで撮れば素晴らしい画が撮れて「ここに行ってみたい」と思う人は増えるでしょう。でも人間の体ひとつでは空中から観光地を眺める事はできません。空撮映像が今後増えてくることで、「実際行ってみたら大した事なかった」という感想をもつ人は増加するのではないでしょうか。
実際に撮影対象は存在しているので決して消費者をだましている訳ではありません。ただ、ドローンで見たすごい風景が楽しめると錯覚して訪れて来る可能性があります。なので、観光地を歩く人間目線で撮影して「ここに行ってみたい」と思われるような動画を撮るべきだと思うのです。
ドローンによる空撮映像は美しいです。ただ個人的には、ドローンの空撮に頼った観光PR映像で観光客の動員を狙うのはリスクがあるように感じます。それでも「すごい映像・美しい映像」が持つ動員力は大きいので、おそらくこれからは空撮が当たり前な状況になるんじゃないかなと思います。
【一般人による「すっぴん動画」がもっと流行してほしいなと思います】
雨天などの天気が悪い状態の観光地や平日で来場者が少なくて寂しい様子などは、クライアント・企業サイドはイメージダウンになるため避けたがります。そんな観光PR映像は、言うなればノーメイクでお見合いに行くようなものです。公式映像では非常識となるため、天気が悪いと普通は別日に撮りなおします。
信頼できるのは、一般人の動画です。youtubeなどに公開されている個人の観光動画は企業からお金をもらってる訳ではないのでありのままの観光地が映されています。メイクでいえば「すっぴん」。加工も演出もされていない、観光地の本来の様子を知る事ができます。すっぴんの観光地を見たうえで行くか行かないかを決めるのが一番フェアだと思うんです。
旅行はお金も消費しますし、貴重な休日も消費します。消費者が気持ちよくお金と時間を使えるよう、一般人による「すっぴん動画」がもっと増えればいいなと思います。