
今月発売の山と渓谷に、「前夜発による睡眠不足の頭痛が、甘酒を飲んだら消えた」というコラム漫画がありました。

テント泊・小屋泊で頭痛になりやすい人は、甘酒が救世主になるのかも…?
どんなメカニズムで甘酒が頭痛に効くのか、何かエビデンスはあるのか、別のもので代用はできるのか、登山で持っていきやすい甘酒はどんなものがあるのか、調べてみました。
目次
山と渓谷のコラム漫画の内容について

登山誌「山と溪谷」2025年9月号の125ページ、登山マンガ「でこでこてっぺん(著者:ゲキさん)」に甘酒についての記述があります。
著者の友人たちが加齢による体の不調に悩まされており、著者自身も夏の免疫力アップのために納豆と甘酒をよく飲んでいるとのこと。
「でこでこてっぺん」は1993年から連載を続けている山と渓谷の人気コンテンツ。著者のゲキさんの登山歴も30年以上と経験豊富なベテランなので、有用な情報です。
更年期や老年期を迎えて体力の変化・低下に悩んでいる登山者も多いと思います。甘酒で少しでも頭痛が楽になるのなら、朝の出立時間が遅れることも注意力が減ることもなく、安全登山につながります。
私自身「甘酒が頭痛に効く」というのは初耳です。どんな理由で効くのかを調べてみることにしました。
片頭痛が発生するメカニズムと甘酒の有用性について
こういった健康に関する話題は、医療関係や大手企業の記事だと信頼性が高いです。
まずは頭痛について、大正製薬のサイトにこのような記事がありました。
片頭痛は脳の血管が拡張し、脳神経が刺激されることによって起こります。(中略)以下のような「平常時から急激な変化が起きた時」に誘発されやすくなります。(中略)
◆ストレスがかかった時や、ストレスから解放された時(中略)
◆寝不足の時や、睡眠をとり過ぎた時(中略)
◆アルコールなど特定の飲食物の過剰摂取
◆気候・気圧の変化(中略)
このような変化によって脳内の神経伝達物質で、通称、幸せホルモンといわれるセロトニンが消費されると、自律神経や三叉神経の興奮がコントロールできなくなり、CGRP(カルシトニン遺伝ペプチド)という血管を拡張させる物質が放出され、拡張した血管の周りに炎症を起こすことで片頭痛が起こるのです。
片頭痛の原因はセロトニン不足の可能性があります。では、セロトニンを補充するために何をすればいいのか。
ひとつの手段として「トリプトファン」を摂取するという対策があるようです。東京頭痛クリニックの片頭痛の記事からの抜粋です。
セロトニンを体内で生成するために必要不可欠なものがあります。アミノ酸の一つである「トリプトファン」です。トリプトファンは体内では生成できませんので食事から摂取するしかありません。(中略)
トリプトファンを多く含む植物性タンパク質には豆腐・味噌・醤油などの大豆製品、牛乳・ヨーグルトなどの乳製品、米などの穀物があります。(中略)炭水化物、ビタミンB6を一緒に摂取するとトリプトファンの脳内取り込みがアップします。(中略)
甘酒にもトリプトファン、ビタミンB6、糖質が全て含まれており効果的です。
「甘酒を飲む」→「トリプトファンを摂取」→「セロトニンに作用」→「興奮が収まって頭痛がひく」というメカニズムだったんですね。

なお、何か信頼性の高いエビデンスがないか探しましたが、見当たりませんでした。個人差はありそうです。
続いて、甘酒のトリプトファン含有量について。
食品の栄養素が一目でわかるサイト「カロリーSlim」によると甘酒(1缶190g)のトリプトファンは45.6mg、炭水化物は34.77g、ビタミンB6は0.04mgでした。この量は多いのでしょうか。
甘酒とは別の商品で、植物性タンパク質を多く含有し、携帯性にすぐれて登山に持っていきやすいエナジーバーと栄養素の量を比較してみます。
甘酒の代用となるトリプトファンの多い食べ物は?
大豆由来のタンパク質(トリプトファン)が豊富で、ビタミンB6も摂れるもの。そして、できれば登山に持っていきやすい包装。

探してみたところ、1本満足バープロテインあたりが適しているのがわかりました。甘酒と栄養素を比較してみます。
| 甘酒(スティック用100mlに変換) | トリプトファン/24.2mg 炭水化物(糖質)/18.4g、ビタミンB6/0.02mg |
| 1本満足バープロテイン カカオ | トリプトファン/222mg 炭水化物(糖質)/11.9g、ビタミンB6/0.18mg |
さすがは化学と技術で生み出された知恵の結晶・エナジ-バー。トリプトファン含有量が桁違いです。炭水化物量がちょっと少ないものの、ビタミンB6の量も約9倍となっています。
ただ、それでも甘酒の方が優位と考えられます。それは、消化・吸収スピードの違いです。
固形物(プロテインバーなど)は消化のために胃で分解する必要があり、吸収されるまでに1〜3時間程度かかります。対して、甘酒は液体なので胃をすぐ通過し、小腸に素早く到達。10〜30分程度で吸収します。

寝起きで頭が痛いときにサッと飲めて早く吸収できるという点で、甘酒の方が有用だと考えられます。
水に溶けるスティック状の甘酒について
「でこでこてっぺん」の作中で、水でわるスティックタイプが便利というセリフがありました。
確かに個包装で加水するものなら、軽量コンパクトで常温保存もできるので登山に持っていきやすいです。
甘酒の水で割れるスティックタイプを調べてみたところ、ネット通販では以下の商品がお手頃のようです。
日東紅茶
七穀麹入りの甘酒 スティック 8本入り×3個

酒粕で作られた甘酒。1袋8本入りで定価388円。1本あたり49円くらいです。
伊豆フェルメンテ
お湯を注いですぐ飲めるあま酒

米麹の甘酒の方が好きな人はこちら。定価は1袋5個入りで270円。単価は54円。ネット送料が高いので近所のスーパーで見つかればラッキーです。
株式会社オフィス・ミント
糀にこだわった甘酒スティックゼリー
【amazonで探す】 / 【楽天市場で探す】

こちらはゼリータイプの米麹甘酒。加水なしで摂取できるので、マグカップを汚さずにサッと補給できます。amazon価格は30包で2052円。単価は69円です。
個人差はあると思いますが、試してみようと思います
以上、「登山の頭痛対策に甘酒」の記事でした。
なお、高山病由来による頭痛の場合は「標高を下げる」のが最も確実で効果的な対処法です。
標高2500m前後以上で頭痛が発生した場合は、片頭痛ではなく高山病かもしれないのでご注意ください。
昔は甘酒を夏バテ対策でたびたび飲んでいたのですが、最近はご無沙汰になっています。
このところ「なんか昔に比べて体のキレがいまいちだな」と感じ始めているので、甘酒習慣を復活させてみようと思います。
伊豆フェルメンテ
お湯を注いですぐ飲めるあま酒












