7月28日放送分の「ビートたけしのTVタックル」のテーマは、富士山登山。
今年から始まった登山規制や、ご来光渋滞に環境問題、登山鉄道構想などについて語られました。
ゲストコメンテーターは、登山家の野口健さん、山岳医療救助機構の代表・大城和恵さん、富士山頂上写真家の植田めぐみさん、TheHEADLINE編集長の石田健さん、モデルでラジオナビゲーターの長谷川ミラさんの5名。
富士登山問題についてどのような提言や議論がされたのか、ゲストの主要なコメントをまとめてみました。
2024年の富士山登山ルールについて
山梨県 | 静岡県 | |
人数制限 | 1日 4000人 (山小屋の宿泊予約は除く) | なし |
登山規制 | 午後4時から午前3時までゲート閉鎖 (山小屋の宿泊予約は除く) | 午後4時以降の登山自粛要請 (※強制力無し) |
通行料 | 1人 2000円 (※別途 協力金1000円・任意) | なし (※協力金1000円・任意) |
事前予約 | 必要(通行料前払い) | 必要 (登山時間やルールの事前学習あり) |
山岳医療救助機構 代表 大城和恵さんのコメント
・量から質への転換。入山者が多すぎる。登山規制で弾丸登山が減ればご来光渋滞が緩和され、夜間~日の出の事故件数軽減につながる。入山者の質も高くなると思われる。
富士山頂上写真家の植田めぐみさんのコメント
・実際に夜間登ってくる人は減った。
TheHEADLINE編集長の石田健さんのコメント
・インバウンド観光から資源を守る。アムステルダムは年間宿泊者数を2000万泊以内に制限し、ホテルの新規建設を禁止するなど強い規制をしている。これに比べれば2000円は外国人からすれば安い金額。
アルピニスト 野口健さんのコメント
・静岡県は制限が無いため何万人でも登れてしまう。山梨県とルールを合わせるべきだった。
・山梨県側で「時間の制限」をしたのが大きかった。
・山梨県側は5合目から8合目までは県有地の土地なので規制が出来たが、静岡県側は国の土地なので県の権限では難しい。
富士山開山後に相次いだ事故について
富士山頂上写真家の植田めぐみさんのコメント
・開山してしばらくは例年より天候が悪い日が続いた。朝の気温が2度で風速20mの日もあり、遭難死亡事故の要因となった。
山岳医療救助機構 代表 大城和恵さんのコメント
・登山者の動きが変わった印象。拙速になった。せっかく休みをとったんだから無理して行こうとなってしまう。
・見た目が軽装だから悪いわけではない。経験や天候で条件が変わる。8合目で低体温症で運ばれてきた人は、登山用ではない雨合羽を使っていたり雨合羽の上に防寒具を着たりしている。装備の選び方や使い方などのレクチャーが必要。
アルピニスト 野口健さんのコメント
・山小屋を予約したから悪天候でも行ったというケースを聞いている。基本的に山は自己責任で自分で判断するものだが、富士山に来る方にそれは期待できない。ある一定の気象条件が悪化したら登山道を閉鎖する、くらいしないと犠牲者は続くと思われる。
・(登山装備についての教育は)富士山に来る前にやらないといけない。
・ゲートのスタッフは装備が整ってない人を止める権限をもっていない。
富士山頂上写真家の植田めぐみさんのコメント
・街で猛暑のなか暮らしている人にとって富士山の気温は想像しにくい。そのため、毎日富士山から動画を撮ってリアルタイムで状況を伝えている。山頂の天候や服装などの様子をもっと周知させたい。
富士山登山鉄道構想について
アルピニスト 野口健さんのコメント
・明治時代から富士登山鉄道構想はあり、ずっと検討されていた。(私も)地元の観光連盟と一緒に登山鉄道計画のメンバーに入っている。
・鉄道予約制で事実上の入山制限ができる、冬も行けるようになると冬の観光客が増える、夏減らしたぶん冬増やせれば観光客数を分散できる。
・知事が変わって高山鉄道からLRT(次世代型路面電車)に変更になった。(山での)路面電車がどういうものなのか理解がまだ低い。
・登山鉄道の反対運動はあるが、鉄道支持の知事が選挙で勝ったので市民からの支持は得ていると思われる。
・基本的に一般車両の進入を止めたい。5合目まで登山鉄道でしか行けないという状況を作りたい。電気バスの場合、電気自動車はよくてハイブリッドはダメとか法整備が難しい。
・駅は3か所くらい検討。景色が良い場所、庭園がある場所などに駅を作って途中下車ができるようにする。
・5合目に建造物が集中しているのが世界遺産的に良くないと指摘されている。5合目の駅を半地下にして売店などを地下に入れれば富士山が噴火したときのシェルターにもなる。
・個人的に1番いいと思っているのは、スバルラインを廃止して1合目から歩くようにする。富士山は本来日帰りで登る山ではない。
富士山頂上写真家の植田めぐみさんのコメント
・富士山は崩れやすい山、実際に土砂災害も発生している。鉄道工事をすることでリスクが増すか不安。電気バスなどで維持ができるのでは。
・富士登山と観光が一緒になっているので事故が発生している。世界文化遺産の富士山観光と、富士登山とを切り離して考えるべき。
TheHEADLINE編集長の石田健さんのコメント
・富士山は自然遺産というよりは文化遺産。信仰や絵画になっているという富士山の歴史がユネスコに評価されている。登れなかったから残念だ、だけでなく5合目以下で富士山の文化や歴史に触れる寺社訪問などのアクティビティを開発し、持続可能なものとして残していくべき。
番組を見ての感想
有識者のコメント、学びになりました。
富士山の登山規制は現在のところ効果的に運用されているようなので、今シーズンの山梨県側のデータで良い結果が出れば、国が動いて静岡県側もゲートを設置するのではと思います。
軽装・装備不足による事故については、ゲートに警察的な権限を持つ人員を配すのが良いように思います。ノーヘルやシートベルト無しでバイクや車が運転できないように、法を整備することで事故を減らすことができそうです。法整備は国が動く必要があるので、もっと本腰を入れて富士山問題に取り組んでもらえたらなと思います。
富士山登山鉄道は、スイスの登山鉄道のようなものが検討されていると思っていました。LRT(次世代型路面電車)は雪が降る北陸や北海道での運用実績があり、線路の建設費が安く、バスのように乗り降りできるのがメリット。ただ、富士山厳冬期の急勾配でも活躍するかはまだ未知数だそうです。電気バス派を納得させる「わかりやすいメリット」が欲しいです。
訪問者目線では、悪天候で富士山に登れなかったときの予備プランで「LRTで名所を巡る」があると満足感が得られて嬉しいです。
新しく始まった富士山登山規制、懸念されている「静岡県側への登山者数の過度な流入」は発生するのでしょうか。
富士登山の混雑ピークを迎える8月のお盆時期、富士山がどうなるのか注目したいと思います。