

北アルプスにある岩の殿堂「ジャンダルム」。西穂高岳と奥穂高岳の間にあり、標高は3163m。岩登り経験がある熟達者向けの難関コースとして知られています。


そのジャンダルムの頂きに、ジョウロを手にした天使の鉄製の看板が据えられています。

この天使、誰が何の目的で作ったのでしょうか。調べてみました。
(2024年9月/3代目ジャンダルムについて加筆しました)
目次
ジャンダルムの天使の作者について
ジャンダルムの天使の作者は、剱岳近くの山小屋・仙人温泉小屋でスタッフを務めている小森武夫さん。(ハンドルネーム:Chokomaka)
仙人温泉小屋ホームページにある2014年のエッセイに看板を設置した時の記録が記されています。
ジャンダルムのピークに着いた。早速、ザックからエンジェルを取り出し、石を集めてエンジェルを建てた。
2014年(平成26年)8月20日(水) AM10:15 ジャンダルムにエンジェルが舞い降りた瞬間!!

初代ジャンダルムの天使看板はいつから置かれたのか
仙人温泉小屋のエッセイには、初代の看板を設置した日時も記載されていました。
2004年(平成16年)8月21日に、西穂高山荘から、奥穂高岳への稜線を辿って、持って行ったものだった。

なぜ天使のモニュメントを設置したのか?
小森さんのアメーバブログ2012年の記事に設置した動機が書かれてありました。
最初にジャンに行った時は、石にマジックか、何かで「ジャンダルム」と書いてあっただけ、それも、いまにも消えそうになっていた。
次の時も同じだった、その次も.........。
これでは、『折角ジャンダルムのピークに登った人も写真にも残らないな!』と思い、ヨーシッ!何か作って見ようか!!と思い、作ったのが、このエンジェルだったんだ!

また、仙人小屋のエッセイにはこのように記されていました。
初代エンジェルが、今までジャンに登った方々の想い出となったように、 「二代目エンジェル」も、今後、多くの人達に愛されるとともに感動の一助とならんことを祈念する次第です。
末筆ながら、奥穂高~西穂高間の稜線を試みる人が増えている様であるが、何時までも、エンジェルに安全登山を見守って頂きたいものである。
難関エリアのジャンダルム。岩場を渡る途中やその前後で登山者の命を奪う滑落事故も発生しています。
その頂きに安全を願うモニュメントがあるのは、登山者の注意力を高めるのにも役立っているように思います。
ジャンダルムの天使の看板の材質について
エッセイとブログには、ジャンダルムの天使看板のサイズや素材についても記載されていました。
初代エンジェル看板は鉄製で、サイズは長さ14cm×高さ8cm。
二代目のエンジェル看板はステンレス製で、サイズは長さ23cm×高さ18cm、支柱の長さ90cm。重さは1.3kg(支柱含む)です。

国立公園内に看板などを設置する行為について
なお、山に看板などの設置物を置く行為を歓迎しない意見もあります。
ジャンダルムは中部山岳国立公園の長野県と岐阜県の県境に位置しており、長野県の「自然公園における行為の規制」にはこのように記されています。
自然公園の特別保護地区では、原則として現状の変更はできません。また、特別地域では各種行為が規制されており、許可等が必要となります。
○看板・案内板の設置及び建物・工作物の壁面等に掲出・表示する行為。
○モニュメント、慰霊碑、銅像、彫刻等の設置も対象。
自然公園内の「特別保護地区」「特別地域」では基本的に看板を置いたりできないのですが、「普通地域」なら別の話となります。
広告物の設置・掲出・表示
※2.5m 以下の高さで建物や工作物の壁面に広告物等を掲出又は表示する場合、法令の規定により、又は保安の目的の場合等は届出不要です。
では、ジャンダルムは何地域にあたるのでしょうか。環境省の中部山岳国立公園のページに区域図がありました。

設置者が環境省に許可申請をして承認されたのかどうかはわかりません。(設置者のブログで「許可」「申請」などを検索しても記事は出てきませんでした)
もし無許可だったとしても、この看板は「広告」というよりは目的地への到達がわかる「道標」として機能し、登山道に設置されたハシゴや鎖と同様に「必要」な部類に入るとは思います。
私利私欲のためや他の人の迷惑にはなっていないので、国としても黙認という形をとっているのかもしれません。
懸念点としては、この看板を模倣したような宣伝目的のモニュメントが無許可で山に溢れかえる恐れがあるなどでしょうか。
ジャンダルムのモニュメントを見て、私も同じようなことをやりたいと思った方はまず環境省やその地域を管轄する事務所などに問い合わせをするのが良いと思います。
【追記】ジャンダルムの天使が落ちたそうです。
2024年8月26日午前、登山者が誤ってジャンダルムの天使を崖下に落としてしまったとのこと。
2014年8月の設置からちょうど10年。長らく登山者を見守ってきた2代目ジャンダルムの天使はその役目を終えました。

初代の看板もこうやって誰かが落としてしまったのかもですね。
【追記②】ジャンダルムの天使3代目が設置されました。
ジャンダルム
天使はいないと思ったけどさっき3代目天使が設置されたw pic.twitter.com/yY4p4D18v6— 白 (@siro86451) September 6, 2024
ジャンダルムの天使滑落から10日ほど経った2024年9月7日、ジャンダルムに3代目の天使看板が設置されました。

この3代目、これまで製作されていた小森さんは携わっていないようです。
シルエットはほぼ同じ。稜線などの端の処理は丸みがあってケガをしないような配慮がされています。支柱も太くなりました。
3代目ジャンダルムの天使は誰が作ったのか?
たまたま設置当日にジャンダルムに登り、設置者に会った方がいます。
その方が話を聞くと、
「ジャン初登頂の際に見えた天使の存在の大きさに魅了された自分。不在となるとやっぱり皆んながっかりする。そしてそれ以上に落とされた方の気持ちになると山に登らなくなるのではないかとも思いできる事をしただけです」と語って名前を言わずに3代目ジャンの天使を置いていかれた
とのこと。名前を名乗らずにその場を去ったそうなので、自己顕示欲ではない善意での設置だったようです。

現在まだSNSなどで名乗り上げている人は確認できていません。
出来ればこのまま3代目を作った人が不明なままで、「安全登山を見守るみんなの天使」として愛されたらいいなと思います。
まとめ
今回の3代目ジャンダルムの天使の設置、SNS上には「自然公園にゴミを置くな」などの否定的な意見も出ています。設置をよしとしない人が撤去したりするかもしれません。
個人的には山頂に着いたときに標高と山名が書かれた何かがあると達成感があるし記念撮影にも役立つので、看板やモニュメントがあるのには賛成です。
争いが起こらないためには、「国や県公認でその山を代表する動植物などをデザインしたご当地標高看板を設置する」という流れができて、「ジャンダルムに国公認の天使看板が置かれる」などが決着として良いのですが。
登山の聖地ともいえる場所で、撤去・設置の争いが起こらないことを祈りたいです。

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